スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

(漫画) 真説 ザ・ワールド・イズ・マイン 

The World Is Mine

真説 ザ・ワールド・イズ・マイン
新井英樹 エンターブレイン

 本漫画史上に残る名作だとか、『火の鳥』、『デビルマン』に次ぐ第3の漫画だとか、方々で絶大な評価を受けてる漫画、『ザ・ワールド・イズ・マイン』の復刻版、『真説 ザ・ワールド・イズ・マイン』を全5巻衝動買いして一気に読んじゃいました。

 何かこの漫画って、週刊ヤングサンデーに1997年から2001年まで連載されてて、単行本も全14巻が小学館から販売されていたのに、すぐに絶版になっちゃったとかで、昨年2006年に復刻版がでるまで購入不可能だったらしい。そんな経緯があったり、最初に書いたようなものすごい賛辞を受けてたりで半ば伝説化されてる漫画らしいんだけど、つい最近までその存在すら知りませんでした。1997年から2001年っていったら自分の中では人生でもっとも漫画読んでた時期なのに、何で知らなかったんだろ。逆に知らなかったおかげでのめり込んで一気に読むことができたけど。

 物語の内容は、トシとモンと呼ばれる二人のテロリスト(通称トシモン)が無目的に警察署襲ったり、一般市民大量に虐殺したり、ヒグマドンと呼ばれる正体不明の怪獣が突如出現したりで日本中が震撼して、最終的には地球規模の問題になっちゃうってのが軸なんだけど、はっきり言ってストーリー自体はどうでも良かったりする。何て言うかこの漫画、物語が楽しいとか面白いとかそうゆうんじゃないんだよね。作品全体に一貫したテーマがあって、作者が作中に登場する様々な人物を使ってそのテーマを読者にひたすら訴えかけてきて、読者はそのテーマについて自分なりに考えて楽しむっていうか、う~ん、上手く言えないけど、そこから自分なりの答えを見つけるっていうか、まあそんな感じ。後半はもう漫画というより完成された一つの文学作品だし。
 
 で、そのテーマってのが、「暴力と死とヒューマニズム」だと思う。
 
 暴力からくる死とそこから生まれるヒューマニズムってこの作品以前にも以後にも色んな作家、漫画家、映画監督が挑んできたテーマだと思うけど、それに関する自分の意見を相手に伝えることって凄く難しいことだと思う。そもそも明確な答えなんてないテーマだと思うし、深く追求しすぎると個人の哲学の押し付けになっちゃったりするし、えらく難解なものになっちゃたりすると思う。それはそれでいいと思うし、そういった作品(例えば『地獄の黙示録』なんかがそうだと思う)も個人的には凄く好きだけど、この作品の良さというか上手さってのはそうなってないところだと思う。
 登場する人物一人一人が凄く丁寧に作られていて、そういった人物達が自分の意見として暴力や死やヒューマニズムを体現したり語ったりするんだけど、それらのセリフや描写の一つ一つがめちゃくちゃインパクトがあって凄く印象的。そうすることで作者の持つ哲学みたいなものが読者に自然に入ってくる感じで、そういった作りが本当に上手いと思う。あと、主人公であるトシモンに殺されてしまう人物達が被害者というただの「記号」になっていないところも大きなポイントだと思う。作者自身がインタビューで、「この作品において殺人のシーンではできるだけ自分が被害者になったつもりで描いている」とか、「決して暴力をスタイリッシュにではなくリアルに描いている」みたいな事を答えていたんだけど、おそらくそうすることで死を伴う暴力の悲惨さを強調しているんだと思う。また、それによって読者は不条理な暴力を不快に感じざるを得ないようになっているんだと思う。極端な暴力を描くことで暴力を否定してるっていうか、肯定はしないぞってスタンスだと思う。

 あと、この作品を読んですごく思ったのは、この人キューブリックの映画が好きなんだろうな~、ってこと。前半のモンの暴力に『時計じかけのオレンジ』を感じたし、ラストシーンには『2001年宇宙の旅』を感じた。インタビューでヒグマドンの正体はモノリスだとか言ってるし。


 過度の暴力シーンやトラウマになりかねないエピソード満載で、普段そういった作品に触れたことがない人は生理的に受け付けない漫画だと思うけど、そうでない人は絶対読んで損はしない漫画だと思う。

スポンサーサイト

(小説) 妖星伝 

妖星伝

妖星伝 鬼道の巻 1977年7月15日 第1刷発行
妖星伝 外道の巻 1978年2月15日 第1刷発行
妖星伝 神道の巻 1978年10月15日 第1刷発行
妖星伝 黄道の巻 1979年9月15日 第1刷発行
妖星伝 天道の巻 1980年9月15日 第1刷発行
妖星伝 人道の巻 1981年7月15日 第1刷発行
妖星伝 魔道の巻 1995年3月15日 第1刷発行

著者 半村 良
出版 講談社

 書は近年『戦国自衛隊』等で有名な半村良のSF/伝奇小説である。個人的には『戦国自衛隊』よりも、約20年の歳月をかけて書き上げられた本書の方が氏の代表作と呼ぶにふさわしい作品であると思う。一般にメディア等で本書が紹介される際、「日本SF小説界の最高傑作」と称されることが多いが、正にその通りの入魂の力作であると思う。後の日本の小説、漫画、ゲーム等に大きく影響を与えた作品でもある。
 主に田沼意次あたりの江戸時代の日本を舞台とした作品で、おおよそSFとはかけ離れた舞台設定である。実際、物語の前半はSF的要素よりも伝奇的要素の方が強い。しかし物語が進むにつれ話は急速に拡大していき最終的には、絶対者の存在、人間の起源、時間の概念、異星人、DNAといったモロSFな内容になっていく(同時に舞台も現代、宇宙、未来へと広がっていく)。特に本書のタイトルである「妖星」の意味が明らかになるシーンは圧巻である。またSF作品であると同時に非常に哲学的な作品でもある。人とは?愛とは?善とは?悪とは?生とは?死とは?といった生きていく上で誰もが一度は考えた事があるであろう疑問を追究しようとしている。
 そして何よりも素晴らしいのは、これだけあらゆるテーマを網羅しているにも拘らず、物語は発散することなく収束する点である。これだけ壮大になってしまうと、最終的に何が言いたいのか分からなくなってしまい作者の自己満足的な作品になってしまう恐れがあるものだが、本書はそれまでの複線やプロットが見事に絡み合いそして幕を閉じるのである。本当に非の打ち所のない素晴らしい作品であると思う。
 非常にボリュームがあるので時間がないと読むのは難しいと思う。私も数年前に読んで以来、いつか読み直そうと思っているのだがなかなか読めずにいる。しかし絶対に読んで損はしない作品であると思う。

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。